長谷工シニアの住まいと介護

交流誌生活創造のM

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対談 神戸YMCA×生活科学運営-懐かしい学校机のある神戸YMCAの教室をお借りし、期待膨らむ対談に (2016年10月4日実施)

今春開設する「ライフ&シニアハウス神戸北野」は、神戸YMCAと生活科学運営の協働事業です。両者のトップに、コラボレーションの意義を伺いました。

地域に根ざした使命に共鳴

井上 神戸YMCAはキリスト教青年会という任意団体から生まれた組織で、創立は1886年、今年で130周年を迎えます。
使命(ミッション)を実現する団体として「すべての『いのち』が光りかがやくように、これを守り育てる。そのための活動に世代を超えた市民の参加を求め、その活動を通して新しいコミュニティを創造する」ことを掲げています。

浦田 ミッションにある「参加」という言葉に、我々との近さを感じます。生活科学運営は、神奈川県のワーカーズ・コレクティブと共同宣言書を作っています。そこにはワーカーズの「参加型福祉」、生活科学運営の「参加型運営」などが書かれています。年月が経てば人が変わり、環境が変われば志もぶれてしまう可能性がある。そんな時でも共同宣言書を見れば初心に返ることができます。
神戸YMCAとも、「元々こうだったよね」と振り返ることができる場所をつくりたいですね。
ワーカーズ・コレクティブ…ひとことで言えば「働く人たちの協同組合」。雇用された労働ではなく、生活視点に基づいた仕事を市民自らが創り出していく働き方で、メンバー全員で出資、労働、経営に関わっていく事業体。

井上 キリスト教には「後でわかる奉仕」という考え方があります。その時の行いは、何十年後かに結果として表れるという意味です。今回、三宮会館の建て替えにあたって協働事業者を募集するときも、数十年後も協力できる事業者を選びたいと思っていたので、長いお付き合いができることを期待しています。

浦田 新しい三宮会館に、高齢者住宅を組み込むことは、最初から決まっていたのでしょうか。

井上 いえ、他にも、学生レジデンス、貸付マンションなどの案が出ていました。ただ「すべてのいのちが光り輝く」というミッションから、多世代の交わりの場を考えていく中で、YMCA会員だけでなく地域の高齢化を感じ、高齢者は私たちにとって重要な位置づけになると考えがまとまりました。

浦田 他社からも提案があるなかで、生活科学運営を選んでいただいた理由を改めて伺えますか。

井上 私自身も「千里中央」などに見学に行き、関西でも実績をお持ちだと感じていました。
それだけでなく、生活科学運営も任意団体から始まっているので、地域に根ざした使命を大切にしていることが、目に留まったのだと思います。また、介護だけでなくお元気な高齢者を対象とした事業であることも、重要な要素のひとつでした。

浦田 事業者選定のプレゼンテーションでは、ぜひ一緒にやりたい気持ちを表すため、あえて冒頭で「ミッション」という言葉を使って当社の企業理念「地域コミュニティの創造」をアピールしました。そこで良いと思ってもらえなければ、後に何を言っても聞いてもらえないと思ったからです。

井上 選定メンバーには職員だけでなくボランティア理事が多数いました。他の団体とは少し異なる組織運営をしているので、地域に根ざした使命を大切にしていることが、響き合ったのだと思います。

浦田 評価いただけて嬉しいです。神戸での事業は初めてですが、あとは他社との違いである、ご入居者の半数以上が自立高齢者であること、そして半数以上の方がハウスで最期を迎えられていることなどを紹介しました。結果、伝えたいコアの部分が伝わってよかった。ここまで言ったからには「期待に応えないと」という気持ちです。

生活科学運営 代表取締役社長 浦田慶信

自分で役割を考え、参加する

井上 これからは、建て替わった神戸YMCA三宮会館で本部事務局、キャンピングサービスセンター、専門学校の機能をもってスタートしたときに、何ができるのかを考え、一つひとつ形にしていきたいと思います。
以前、加納町はオフィス街でしたが、最近ではマンションが増えました。そのため、会館が中心となって地域に果たすべき役割があると考えています。

浦田 福祉は「困っているから助けて」という人のためにあると思いがちですが、それだと受け身になってしまいますよね。そうではなくて、自分から手を差し伸べるのが参加型福祉の特徴です。まず自分から手を出せば、結局何らかのかたちで自分に返ってくるはずなので、お願いしてやるのではなく助け合いが自然に生まれたら良いですね。たとえば、ご入居者が専門学校生に何をしてあげられるかという気持ちを持っていただけたら、今までとは違う関係性が生まれると思っています。

井上 私たちが考えるボランティアの考え方のひとつに「役割を担ってもらう」ことがあります。最初はこちらから役割を決める場合もあるでしょうが、次第に誰もが、こういう場面なら、この活動なら自分の才能を活かせると気が付けると思うのです。その役割を自分で考えながら担い、責任を果たしていただける場づくりをしたいです。

浦田 ボランティアの考え方も今までとはちょっと違う気がするし、協働のかたちも今までと違うと思います。土地・建物のオーナーではあるけれども、神戸YMCAの本部事務局、専門学校と有料老人ホームは同居の関係でもあります。単純に役割を請け負ったり、請け負わされたりする関係ではないですよね。事業主体としての生活科学運営と、オーナーとしての神戸YMCAのコラボだけでなく、ご入居者と学生や、ご入居者と神戸YMCAの社会活動に関わる人とのコラボも始まりそうです。

井上 一階レストランの使い方はぜひ工夫したいですね。ただルールをがっちり決めてしまうと自由な雰囲気がなくなってしまうので、気をつけたいところです。職員や会員も、まず自分たちが利用したがっています。食事をしながら協議することも多いですし、神戸YMCAにはワイズメンズクラブという大人のボランティア活動団体がたくさんあるので、そのメンバーも待ち望んでいます。

浦田 そこで日本語学科の外国人学生から母国の料理を出してもらっても良いかもしれません。交流は腕の見せどころです。

井上真二(いのうえしんじ)氏
公益財団法人神戸YMCA・10代目総主事。1963年生まれ。大学卒業後1987年より神戸YMCAに従事。現在、学校法人神戸YMCA学園理事長、社会福祉法人神戸YMCA福祉会理事長を兼任。ほか、地域活動、学校・日本語教育、国際関係、福祉関係などの社会活動も行っている。

あるべき姿に正してくれる意義

井上 私たちは民間企業様との協働が初めてなので、全国のYMCAも注目しています。御社は、これまでもたくさんの組織と連携していると伺っていますが。

浦田 創業の頃から、利益主義よりも社会貢献として取り組んできたことが大きいです。私たちの事業は土地・建物が億円単位でかかるので、そう簡単に拡大できるものではありません。だからパートナーと組んで、役割を分けてきました。とはいえ、協働者は誰でも良いわけではなく、ともに行う活動に、社会的意義を感じてもらえなければ、途中で嫌になったり、飽きたりして続けられないと思います。正直、利益だけを考えれば私たちよりも利回りの良い業種はたくさんあります。私たちも最初の志を失わずにやりたいので、立ち位置を一緒にできる組織とパートナーを組みたいと思っています。
協働する最初の理由は、そういうことになりますが、私自身、ハウス長経験後は、全部自分たちでやってしまってはだめだなとわかるようになりました。どうしても独りよがりになって、住む人の選択肢が狭まってしまうというか。また、外部の人の目が入ることで、軌道修正もしてもらえます。

井上 私たちも福祉事業を行っているので、最初、介護事業は自分たちで運営してはどうかという意見がありましたが、やはり、すべてを自分たちで行わないからこそ、新しい価値が生み出せるのかもしれません。

浦田 そういえば以前、さまざまな高齢者住宅を見学している研究者の方が、当社のハウスのカーテンが開いていることに驚いておられました。そう言われてから他社へ見学に行くと、意外と見えない。外に対してホーム内が見えないのはもちろんですし、屋内に入っても、スタッフの事務所や食堂の調理場が目につかないようになっています。私たちは知らず知らずのうちに丸見えのなかで仕事をしているのだと気付かされました。これが協働の最終的な意義なのだと思います。他律的・他動的に、あるべき姿に正してくれる。

井上 キリスト教に「新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れる」という言葉があります。新しい思想や内容を表現するには、それに応じた新しい形式が必要だという意味です。今、ようやく三宮会館という革袋がはっきりしてきたので、そのなかで行う活動はしっかり考えていきたいと思います。

浦田 私たちも、この「ライフ&シニアハウス神戸北野」を建てておしまいではなく、さまざまな選択肢を提供する地域コミュニティの拠点にしていきたいです。神戸YMCAも介護事業を展開しているので、お互いに補完するかたちをとりたいですね。

「神戸北野」開設準備室だより

2016年10月に着任したスタッフが、運営方針の決定など、着々と開設準備を進めています。

運営コンセプト
「より豊かに楽しむ人生を神戸北野で
~ハウスは地域と一緒になって個々を大切に
すこやかな暮らしを提案します~」

各スタッフが「こんなハウスにしたい」という思いを洗い出し、地域、健康、個性をキーワードに、決定しました。スタッフ一同張り切っています。

「ライフ&シニアハウス神戸北野」
開設準備室メンバー

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