長谷工シニアの住まいと介護

社長コラム

上野千鶴子さんと語った「空間の身体感覚」

こんにちは、浦田です。

先日、社会学者の上野千鶴子さんと、上布田つどいの家で対談をしました。上野さんといえば女性学、ジェンダー研究の第一人者。お会いする前はそうとう緊張して、緊張のあまり思わずネクタイをしめてきてしまいましたが、「ネクタイをしないと話せないのか」と言われたらどうしよう…などという心配も杞憂にすぎず。

5月、上布田つどいの家(神奈川県川崎市)の地域交流スペースにて

しかしながらざっくばらんな意見はたっぷりといただき、想定外に(というと上野さんに失礼かもしれませんが)リラックスした会話の時間を楽しみました。対談内容は当社の交流誌『生活創造のM』をお読みいただくとして、ここでは『M』に掲載されないこぼれ話を少し…。

上野さんは建築学の方と住環境の共同研究をされていることもあり、「空間の身体感覚」というテーマに造詣が深いのです。「上布田」見学中も、あじろ風の天井やグループホームの縁側に通じる障子戸に関心を寄せてくださり、まさに高齢者の身体や日本人の色彩感覚になじむ仕様にこだわった私としては我が意を得たり! 「入居者は出入りするたび障子を開け閉めするのか」「外来者は縁側の障子戸から入室するか、それとも廊下側から?」「入居者は個室を“家”と思っているのか“部屋”と思っているのか」…など上野さんからの質問も示唆に富んでいました。入居者は個室と共用スペースを身体感覚の中でどう区別しているかというこの提起を、とても興味深く受け止めた次第です。

私はユニットケアが提唱され始めたころから、部屋より外のほうが明るければ入居者は部屋を出て共用リビング(ユニット)で過ごすのではないか、という仮説を持ち、ハウスの設計に反映してきました。部屋を出たら真っ暗な廊下があるというような「介護施設」にありがちな設計では、入居者は部屋の外に出たがらないのでは、と。ちなみに上布田のグループホームの場合は戸が障子なので、部屋から外の明るさを感じることができる。だから入居者は昼間個室から出て、共用スペースである縁側やリビングをセミプライベートスペースとして利用することが習慣化したのではと思っています。

共用スペースを家庭のリビングのようなセミプライベートスペースと思ってもらうのがいいのか、それとも町内のようなセミパブリックスペースと思って利用してもらうのがいいのか、という議論はあるかもしれませんが、いずれにせよ、高齢者の住まいにとって、日本人が身体化している「内/外/中間領域」を意識した建物づくりには、大きな意味がある。そのことをあらためて深く考え、語り直すことができたことは上野さんとの対談の収穫の一つだったと思いました。
グループホーム。個室の障子戸と縁側
( 2011.6.19 )