長谷工シニアの住まいと介護

社長コラム

スピリチュアル・ケア

こんにちは、浦田です。

先日、ある学習会で、鈴木内科医院(東京都大田区)副院長の鈴木央医師にスピリチュアル・ペインとその解消法について話をうかがい、有料老人ホームなど高齢者住宅での支援のありようにも応用できるのではと深く関心を持ちました。

スピリチュアル・ペインとはがん末期ケアの分野でよく使われる言葉で、生きる意味や価値を見失ったり、死後の不安や罪悪感などで苦しんだりする痛みのこと。これらを癒すケア=スピリチュアル・ケアを提唱する京都ノートルダム女子大学の村田久行教授は、スピリチュアル・ペインの原因を次の3つに分類しているそうです。

1 時間存在の喪失
2 関係存在の喪失
3 自律存在の喪失

当社ハウスにも終末期を迎えられる入居者がたくさんいます。これら喪失感のケアにハウスがどう関われるか、考えてみました。

1 時間存在の喪失
未来は残念ながらなくなってしまいますが、過去を振りかえるとよい人生だったし、現在もそれほど悪くないと、今の自分を受容できるようなケアが必要とのこと。「今の居場所」であるハウスの運営の質がものを言う部分です。

2 関係存在の喪失感
これは家族関係、社会関係を失うことで自己の存在を見失う恐怖。特に病院でおこりやすいという話にはドキッとさせられました。ハウスのご入居者の中にもし「自分が家族のお荷物だからここに入った(入れられた)」と家族や社会から切り離されたような痛みを抱いている方がおられるとしたら、私たちスタッフとの関係でその喪失感を埋めることはできないでしょうか。

このように考えると、私たちが行うべきサービスは単なる「接遇」ではないことがわかり、日常の入居者対応にも違いが出てくるように思います。

3 自律存在の喪失感
自分で自分をケアできない→無価値な自分→生きている意味がない自分。この苦しみを埋めることは難しいと鈴木医師はおっしゃいました。どうしても、食事や排泄にまで他人の手を借りざるを得ない事実が常に目の前に突きつけられるからでしょう。介護型のホームに「入れられた」感覚を持つ人はとくに、そうした痛みとは無縁ではないはずです。

一方、当社でいうライフハウス(自立型)に入居した人はどうなのだろう、と考えました。いずれ他人の手を借りることになったとしても、この生活を「選択した」のは自分。「将来こういう介護をしてほしい」と意思を表明しておくこともできる。このことが、少しでも自律存在の喪失感の軽減につながるのでは、と思ったのです。さらに言うと、今いる自宅に一人で暮らし、地域社会とのつながりも希薄という方であれば、自助孤立から共助自立の住まいに住み替えることで、存在価値や自己実現の機会を新たに見出せるのではないかとも思いました。


最期の身体的な痛みの緩和だけではなく、自立時から要介護期、それぞれの段階での他者の関わりすべてがターミナルケアにつながる。そんなふうに確信した学習会でした。

( 2012.12.13 )