株式会社 長谷工シニアウェルデザイン

Maraku Interview 石井 幹子さん

間楽 ーまらくー

Maraku Interview 石井 幹子さん

都市空間から自室まで。光には、心地いい「間」を生み出す力があります。

 日本を代表する照明デザイナー・石井幹子さん。半世紀以上にわたって世界中の建築や都市空間のライトアップに携わり、今も素晴らしい作品を世に送り出し続けています。そんな石井さんに、照明と心地いい「間」の関係についてお聞きしました。

照明デザイナー 石井 幹子


 「間」という言葉と私の仕事である照明デザインとの関わりを考えてみました。例えば都市の大空間での東京タワーやレインボーブリッジのライトアップは、一晩で何百万もの方々が目を輝かせてご覧になられます。少し小さな空間へと目を転じますと、建築物や庭園を彩る照明は、昼間とは異なる魅力を引き出します。そして、最も身近な照明である家の明かりが、そこに住まう方の暮らしにとって大切なものであることは言うまでもありません。

 空間の大きさに違いはあれど、光は限りなく美しく、人を心地よくさせる力を持っている、私はそう思います。

よみうりランド ジュエルミネーション・2021

 今もライトアップに携わらせていただいている東京近郊のよみうりランドでは、10月から4月までの間、夜の遊園地が650万球のイルミネーションに包まれます。その近くに終末期医療の病院があるのですが、先日、患者さんたちが病室から見える光をすごく喜んでくださっていることをお聞きしました。「来年もまた見たい」とおっしゃった方もいらっしゃって、人を癒す力、元気にする力を改めて実感しております。

 私自身の元気の秘訣は、「日々美しいものを見て、感動すること」です。近くの新宿御苑の散歩を日課としており、日の光を浴び、季節毎に変化する樹木を目で見て、舞い落ちた木の葉を踏みしめながら歩く時間を大切にしています。身近な自然に勝る美しさはありませんから、高齢者住宅でもそういった機会の提供や、空間づくりを心掛けると良いのではないでしょうか。

 また、歳を重ねるごとに、自分自身の「五感」をより大切にするようになりました。自宅にはよく果物を置いて、みずみずしい香りを感じ、楽しんでいます。かぐわしい果物や美しい一輪の花は心を浮き立たせてくれますよね。同様に、良質な明かりは生活を張りのあるものにしてくれます。例えば、ダイニングや自室は明るすぎない、自然光に近い照明にしてみる。朝、昼、晩で一番自分が落ち着く照明に変えてみるのも良いですし、スタンドライトなどお気に入りの「マイランプ」をお持ちになってみるのもお勧めですね。

東京タワーランドマークライト(冬)

 私自身はまだまだ最前線でお仕事をしたいと思っておりますが、元気なうちから終のすみかを見つけて、最期の時まで適切なサポートが得られる暮らしは一つの理想だと思います。親しい友人とは「一緒に高齢者住宅に入ったら楽しいわよね」と盛り上がるのですが、実際入居したら、きっと新しいお友達とも出会えるのではないかと思いますね。

 一人でも多くの方が、最期まで自分らしく過ごせる居場所を見つけられることを願っています。

Profile ────

都市照明からライトオブジェや光のパフォーマンスまでと幅広い光の領域を開拓する照明デザイナー。日本のみならずアメリカ、ヨーロッパ、中近東、東南アジアの各地で活躍。日本を代表する照明デザイナーとして、海外での知名度も高い。東京藝術大学美術学部卒業。フィンランド、ドイツの照明設計事務所勤務後、石井幹子デザイン事務所設立。光文化フォーラム代表として、国内外の光文化の継承・発展にも力を注いでいる。