長年、ご主人のY様とマンションで二人暮らしをされていたM様。
認知症を患いながらも、ご主人が支えとなり、ご自宅でご夫婦での暮らしを続けてこられました。
しかし介護生活は徐々に難しくなり、お二人でブランシエールケア玉川上水へご入居されました。
M様は認知症の影響によりご自身が行ったことを覚えておくことが難しい場合があります。
そのため、ご入居後はご夫婦がお互いに適度な距離を保ち、安心して過ごしていただけるよう、それぞれの居室で生活されていました。
ご入居前、ご主人のY様は家事全般を担っていらっしゃいましたが、お料理だけは少し苦手に感じられていたそうで、
そんなお二人の食を支えていたのが、マンション近くの「居酒屋あら」でした。
約8年間、毎日のようにお店で昼食を召し上がり、さらに夕食用のお弁当も作っていただくなど、
お二人にとってはなくてはならない大切な場所だったそうです。
ご入居後はお店から足が遠ざかってしまったままでしたが、今年4月にY様がご逝去された際のご葬儀には
「居酒屋あら」の従業員の皆様も参列されるなど、ご夫婦とお店との深い絆がありました。
ご主人との何気ない時間や会話がなくなってしまったM様。
ある日職員の間で、思い出の味に触れて、ご主人との時間に少しだけ思いをはせることができたらと
「もう一度、あの馴染みの味を召し上がっていただきたい」という話が持ち上がりました。
同じフロアにお住いのS様とご一緒にランチへ出かけるプレミアムタイムの計画が始まりです。
M様はホーム内では大型の歩行器を使用して生活されています。
外出当日に安全に移動でき、安心してお出かけを楽しんでいただけるよう、
タクシーの乗り降りや職員付添いでの歩行が安定して行えることを目標に、リハビリプランを作成。
日々の訓練を重ね、準備を進めてきました。
そして迎えた当日。
日々の訓練の成果もあり、ついに「居酒屋あら」への外出が実現しました。

お店に到着すると、ママさんや従業員の皆様がすぐにM様に気付き、「いらっしゃい。久しぶりですね」と笑顔で迎えてくださいました。
すると、M様は
「わすれちゃったー(笑)」と満面の笑み。
お店の事は忘れてしまっているご様子でしたが、ママさんのお顔を見るとどこか親しみを感じられているようでした。
ママさんは、
「いつもご主人とあの席に座っていたんですよ」
「M様ご夫婦のおかげで、こうして今もご縁が続いていてうれしいですね」
「最後にはいつも❝ボーノ❞って言ってくれるの」
と、当時の思い出を懐かしそうに話してくださいました。
この日のM様は、お気に入りだった唐揚げ定食を注文。
お料理が運ばれてくると目を輝かせ、一口召し上がるたびに笑顔がこぼれます。
そして時には手をたたいて喜ばれながら、「だって美味しいんだもん(笑)」と一言。
その言葉に、ママさんも職員も思わず笑顔になりました。
認知症により出来事そのものを覚えておくことは難しいかもしれません。しかし、その瞬間に感じる「おいしい」「うれしい」「楽しい」という気持ちは、確かにM様の表情や笑顔となってあらわれていました。
長年通い続けたお店の味、温かく迎えてくださった皆様との再会、そして今も変わらず続くご縁。私たち職員にとっても、人と人のつながりの大切さを改めて感じる一日となりました。
これからもM様にとって大切な思い出やご縁を大切にしながら、M様らしい笑顔があふれる時間を一緒に重ねていきたいと思います。
懐かしい味とあたたかいご縁に包まれた、心温まるプレミアムタイムとなりました。

【顔の見えるケアプランとは】
長谷工シニアウェルデザインでは、ご入居者お一人おひとりのこれまでの暮らしや経験、趣味や嗜好、やりたいことなどをお伺いし、その方らしさを大切にした「顔の見えるケアプラン」を作成しています。顔の見えるケアプランで計画した、その方らしい「心地よい」サービスの時間を「プレミアムタイム」と呼び、力を入れて取り組んでいます。
※本ページに掲載されている写真は、ご本人またはご家族の了承をいただいた上で使用しています(掲載内容の無断転載・二次使用禁止)。
